・ガダラの豚
1巻:偏差値72
2巻:偏差値69
3巻:偏差値45
いやあ、久しぶりに超おもしろい本に出会い、1、2巻は一挙に読みすすめられた。
残念ながら3巻は実にくだならくって、僻僻したのだが、
1、2巻のおもしろさから絶対おすすめしたい本。
テーマは超能力と呪術とトリック。
といってもうさんくさい本ではない。
むしろ先進国での超能力ブームや後進国での呪術の役割について、
科学的、論理的な分析を、ストーリー仕立てにし、
おもしろおかしく、しかしなるほどと思わせて読んでいける。
1巻は日本の超能力とそれを使った新興宗教。
超能力はすべてトリックであるとあばきたてる種明かし師が登場。
主人公の奥さんが超能力的現象を見せられた新興宗教にはまっていくのを、
見事にその種明かしと心理分析をして、そのトリックをあばきたてるのは痛快だ。
読んでいてなるほどなーと感心してしまうところが多く、
しかもそれを難解な理論・理屈でいっているのではなく、
うまいことフィクショナルなストーリーの中にいれこんだことがこのおもしろさ・すごさだな。
絶対に読んでいてはまりますよ。
ただし本編とはまったく関係のない、いらぬ導入があるので、
それはつまらんから、それを読んで「つまらなそう」と投げ出さないように。
ほんとこの導入はまったくいらんのに、読者を逃すだけだよ。
だから注意してね。
はじめの数ページが終われば必ずおもしろくなるから。
2巻はアフリカの呪術。
生活に密着した呪術とは何なのか。
名言は「電話を知らない社会に電話をつかってみてたら、
それはすさまじい超能力と思われる」というように、
社会の文明発展に応じて「超能力」や「予知」の意味が違ってくるように、
ある程度のことは科学技術で理解ができてしまうのだ。
その一方で不可思議な呪術は、科学的なアプローチでなくても、
これまでつちかってきた民族の経験則から真実に辿りつき、
それをただ呪術的方法にのっとってみせるから、なんだかいかにも不可思議に見えるだけで、
そういったことも科学的裏づけがとれるということを物語仕立てで語らせるから実におもしろい。
そして、呪術師と名乗りながら、電話は使うは、ヘリコプターは使うは、
現代科学をアフリカ社会でふんだんに使った呪術師の登場はまさにその極地なのだ。
舞台をアフリカにうつし、旅行記的探検記的ストーリーで、
アフリカってどんなところなんだろうって知りながら、
読めることも一つのポイントだ。
はらはらどきどきで、この巻もなかなかおもしろい。
3巻は最悪。読まない方がいい。
これまでの2巻が台無しになるから。
アフリカ帰還から7ヶ月後、アフリカの呪術師が日本に復讐に来る話で、
1、2巻のような確固としたテーマ性がなく、
やたらめったら人を殺し、大掛かりなトリックでわあわあ騒ぐだけの、
くだらんアメリカ映画のようで、がっかりした。
なんでこんないらんもんつけくわえたんだろうか。
筆者の意図がわからない。
しかもここで思い出したかのように、
1巻の導入部分でさらっと出てきた話をとってつけたようにもってくるんだけど、
それもほとんど重要性を持たずに終わってしまうから、
余計なんのこっちゃってことになる。
3巻はいっておくがつまらない。
1巻、2巻それぞれ巻ごとである程度話は完結されているので、
この本に3巻目はなかったのだと思って、2巻だけ読むのがよろし。