・2002.12.21コンサート秘話(SWITCH・2003/2月号)
「SWITHC」2003年2月号の表紙が桜井さんであることに驚かされ、
「ひょっとしてインタビューか?」と中を広げてみると、
一夜限りの12・21コンサートの舞台裏レポートみたいなもので、
僕は迷うことなく買ってむさぼり読んだ。
いろいろなことが書かれていて、コンサート写真なんかも多くあって、
コンサート会場前で撮った写真には、すごっくちっちゃくだけど、
僕が写っていて、あの場にいたから、コンサート報告自体に目新しさはないけど、
あらためてあの時コンサート行けてよかったなという確認と同時に、
それまでに至るリハーサルの様子なんかは実におもしろかったんだけど、
僕が一番驚かされたことは「虹の彼方」秘話だった。
僕のコンサートレポートにも書いたが、
ほとんどが最近出されたアルバム中心の選曲である中、
アンコール(というより第2部)のはじめに、
虹の彼方へを持ってきたことは大きな驚きでもあったが、
それは大きな感動でもあった。
実はここに「虹の彼方へ」を持ってくるのは、
リハーサルで桜井君が提案したのだが、
誰もその選曲にはじめは賛成しなかったというのだ。
そりゃそうだ。唐突すぎる。
ましてアンコールの最初に一発目に持ってくる曲としてはどうか?
たとえば昔の作品でも大ヒットシングルを持ってくるのならありえるかもしれない。
でもアルバム収録曲でしかも、セカンドアルバムという古い曲を持ってくることは、
メンバーですら当惑するのは当然といえた。
でも桜井はねばって、なんとかリハーサルで虹の彼方へを入れて歌ってみた。
すると予想外の効果に、無事コンサートの選曲に入ることになったのだ。
「何かこれからワクワクするようなことがはじまるという意味では、もってこいの曲だった」
確かにそうだ。
一度舞台裏に下がったものの、
当然このコンサートで歌うはずの「蘇生」も「Any」も「HERO」も歌われていない。
当然、アンコールの一発目はこの3曲のどれかが来るだろうと、誰もが予想したし、
実際、桜井の提案がなければ「Any」ではじまるはずだった。
でも「虹の彼方へ」効果は抜群だった。
虹の彼方へを通しでオリジナルでやったわけではなく、
桜井一人のアコギ弾き語りのワンコーラスのみ。
はじめ、予想だにしなかった曲のはじまりに、
「ひょっとして新曲か?」と思ったのはほんの数秒。
「あっ!虹の彼方へをやるんだ!」
この一曲の存在は確かに大きかった。
最近のアルバムだけでなく、そんな昔の曲をやることによって、
昔から聞いていた多くのファンは、
懐かしいという気持ちでありながら、どこかに新鮮さを感じる、
つまり、桜井に復活舞台「懐かしい姿だけど新鮮に思える」と、どこか重なり合っていた。
そして実際、この曲を景気づけに、「蘇生」「Any」「HERO」と、
多分最もこのコンサートで聞きたい曲のトップ3が立て続けに奏でられたのだから。
もしかして、メンバーが反対したことにめげて、一度もリハーサルで弾かなければ、
この素晴らしい効果はなかったことになる。
ある確信があったからこそ、メンバーの反対を押しきって、やった甲斐のある「虹の彼方へ」。
あのコンサート以来、この「虹の彼方へ」ではじまる、
僕が数あるミスチルのアルバムの中でもあまり聞かない「KIND OF LOVE」を、
聞くようになったという、余波まで生んでいる。
コンサートはそういう意味で楽しい。
今あるものの中から新しい何かを発見する契機となるのだから。