Versus(93.9.1)
明暗の曲が非常にはっきりと分かれ出した、まさしくアルバムタイトル通りの「対決」。
桜井君の揺れ動く心の振り子が、明にいったり暗にいったり…。
そのメリハリを楽しめる、初期ミスチルの脱皮的過渡期作品といえる。
初期ミスチル作品の集大成ともいえるアルバムだ。
●Another Mind
流されるのも慣らされてたどり着けばいつもOh No
「All by myself」からの桜井君の想いは変わっていないのか。ますます自己の内面へと向かい、
表層の社会の虚に気づき始める桜井君の心がよく表れている。
「誰かが定めた自分を演じてる」
「流されるのも慣らされてたどり着けばいつもOh No」
虚像を背負ったロックンロールスターへと邁進する桜井君。
●メインストリートに行こう
しまい込んだ孤独な心をやさしく照らすLight
これほど明るくノリノリで恋を楽しむような曲を書いたのははじめてではないか。
「メインストリートに行こうよ」というタイトルからもわかるように、
堂々と恋を楽しもうという希望に満ちた恋が歌われている。
●and close to you
気付かぬふりが上手いから
片思いを描いた歌だが、リズミカルな曲調が重くさせない。
むしろ「なんで俺じゃなくあいつなの?」という不思議さが、
自分に対する自信が、そんな曲調にさせているのかもしれない。
●Replay
髪を切るだけで忘られるような恋じゃないだろう
3rdシングル。
ファーストシングル「君がいた夏」を思い起こさせる、
明るくしかし切ない恋心を歌っている。
●マーマレッド・キス
すれ違う人々が笑って見てるけど
●蜃気楼
心の何処かに今でも潜んでる"気狂いピエロ"が
明暗明暗と続くこのアルバム。
「メインストリートに行こう」「Replay」が明なら、
「Another Mind」とこの「蜃気楼」が暗か。
「コンプレックス」「虚像」「壊れかけた孤独な心」「気狂いピエロ」
「ゆがんでるボーダーライン」
そして心の何処かに潜んでいる「狂った果実」が、次作で爆発する。
●逃亡者
2作目と同じく、まるで桜井君の暗部とのバランスを取るために挿入された、
ドラムの鈴木が歌う曲。しかしこれ以降、鈴木が歌う曲が入ることはなくなった。
バランスを取る必要がなくなったのか?いや鈴木の曲を1曲入れたぐらいでは、
バランスのとれないほど、ミスターチルドレンはモンスターバンドへと成長してしまったからだろう。
●LOVE
投げやりな気持ちが空に消えてくよ
ミスチル初期作品の中で、恋愛をシーンを決めて歌う曲の中では、最高傑作といっていいだろう。
語り尽くされた「LOVE」というタイトルとは裏腹に、決して詩は甘ったるい恋愛物語ではないが、
だからこそ本当のリアリティあるラブソングといえるのではないか。
●さよならは夢の中へ
●my life
ドラマみたいな上手い話はめったにないけれど
ベストアルバムにも収録されている、
初期ミスチル作品の中でも非常に完成度の高いポップなラブソング。
失恋の歌にもかかわらず、軽いノリで「振られちゃった」と歌い上げるところに、
常に前向きさを忘れさせない、元気が出てきそうな曲になっている。
「62円のラブレター」という詩が、昔の手紙の値段を思い起こさせ、郷愁を誘う。
「テレビゲームに胸のうちをあかせば」という何気ない詩が、"現代"を感じさせる。