・2007年9月23日 土楼概略
中国には数知れぬ不思議なものがたくさんある。
その中でも今回訪れた「土楼」も変わったものの1つだろう。
要塞のように土壁で円形に囲い、
その中には木造のアパートかマンションのように、
何室もぐるっと部屋がいくつも並んでいる集合住宅。
円の部分はぽっかりと空いていて空が見える。
上から土楼を眺めるとまるでUFOのようだ。
これが過去の遺跡ではなく、
今も多くの人がここで暮らしているのが何より驚きだ。
観光名所地化されて、入場料をとる土楼もいくつかあり、
2001年に世界遺産に申請しているらしいが、
(認可はされていない)
別にそんな観光土楼に行かなくても、
アモイからバスに乗って福建省の地方へ行くとそこら中に土楼がある。
その数なんと約1万から2万戸あるといわれている。
この不思議な巨大建築集合住宅、
マンションやビル、百貨店などの建築の礎ともいえる土楼を、
50戸ぐらい巡ってきた。
形は円形または長方形のものが多く、それ以外のものもある。
だいたい高さは3〜4階建て。
ほんとに小さなアパートのようなものもあれば、
1つの土楼に500人以上が住める巨大なものもある。
正面入口から入ると、ほとんどの場合、真正面の奥に、
先祖を祭る祭壇がある。
そもそもこの土楼は、一族が一緒に住んでいたという。
すべてここに住む人の先祖は同じ。
だから集合住宅の広場の中心に祭壇があるのだ。
祭壇以外に中の広場には、
家畜小屋がある土楼もあれば、井戸しかない土楼もあれば、
2階建ての小屋がある土楼もあり、さまざま。
だいたい1階には台所があり、ニワトリなど家畜がうようよ闊歩していて、
2階以上に人が住んでいる。
猫と犬がいる土楼も多かった。
(後日、土楼猫写真&土楼犬写真をアップします)
なぜこんな城塞のような、一族が住む集合住宅が必要だったかというと、
華北から華南に逃れてきた人たちが、
見ず知らずの土地で襲われないよう、
このような建築物を造り、そして一族で一緒に住んでいたという。
今でも人が暮らしている土楼は多いが、
さすがに時代の変化と建物の劣化とともに、
徐々にだが土楼人口は減っているらしい。
観光地化されていないローカルな土楼に行くと、
「お茶を飲んでいかないか」と部屋に招いてくれた。
みやげに柿をくれたりもした。
いやー、ほんとこういう旅ができるのがうれしい。
ツアー旅行でないからこそ味わえる旅の醍醐味。
さて、この土楼巡りだが、奥地にあるわけでなく、
日本からなら非常に短時間で簡単に行ける。
関西空港から飛行機で3時間、
台湾の対岸、香港より北にあるアモイ(厦門)という、
大手町と新宿を合わせたような大都会にまず行き、
そこからバスで4時間ほど行けば、
もうそこら中に土楼がある地域に行ける。
私の場合、湖坑(フーコン)という町を拠点に、
あちこちに点在する土楼へは、
徒歩またはバイクタクシーをチャーターして行った。
のどかな田園地帯をバイクに揺られながら土楼巡りをする。
こんな最高の贅沢はないなと思った。
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