大理古城から30kmほどいったところにある村。
毎週月曜日にマーケットが開かれるということで月曜日にあわせていってみた。
ところが、である。
タクシーで降ろされた村の入口に着くと、路上にぽつぽつと店が出ているが、
随分と数が少なかった。
村に着いたのが10時過ぎだったので、ひょっとしてマーケットは、
朝早くから行なわれていて、もう終わってしまったのではないかという不安がよぎった。
ただ古い村の様子はおもしろいので、とりあえず村の中に入ってみることにした。
それでもなんだかもうマーケットはもう終わってしまったみたいな雰囲気が漂っていた。
なんだもうマーケットは終わってしまったのかという想いが強くなった時、
路上にペー族の民族衣装を着て、「顔に歴史あり」といえる、老婆がおみやげものを売っていた。
こういう人を撮りたいと思ったんだよな!と思い、写真を撮ってもいいかといったが、
「写真を撮るならなんか買っていってくれ。それなら撮らせてもいい」といっているような感じだった。
何かいい物があるなら買ってもいいかなと思ったが、
そのみやげものは誇りまみれでよれよれでどれもひどかった。
基本的に買いたいものがないのに買うのは嫌だし、写真を撮るために何か買うのも嫌だった。
しかしマーケットがもう終わってしまって、
このおばあちゃんぐらいしか撮れないかもしれないという焦りがあったので、
僕は仕方なく、一番マシで安そうなものを探した。
しかしそれでもひどかった。
このよれよれのパンダポシェットがなんと10元(150円)!もした。
日本人的感覚からすれば安いだろうが、
中国の物価感覚からすればかなり高い感があったが、
とにかく1つ買って、買ってけ買ってけといううるさいおばあちゃんを黙らせて、
早く写真を撮りたいという思いもあったので、その値段で買った。
そして約束だよということで写真を撮った。
すると急にかしこまって硬い表情になってしまう。
なんだよ、おばあちゃん、
さっきまで買わせようとあんなにいきいきとした表情してたのに、
いざ写真を撮ることになったらすっかり固まってしまって。
あまりに硬い表情なので、僕はにやっと笑ってカメラをさげると、
おばあちゃんもこれまで見せたこともない笑顔をみせると、
「もう1つなんか買ってかないか」と再びセールスを開始しはじめた。
「おいおい、おばあちゃん、その笑顔もう一度!」
と日本語でいって、カメラを再び構えたんだけど、
「もう1枚撮るならもう1つなんか買ってね」みたいな感じで再びセールス開始。
まいったなあと思い、でももう1つ買う気は起こらず、
おばあちゃんのセールス姿をファインダーをのぞかずに何枚か撮影すると、その場を去っていった。
よれよれのポシェットを苦笑いしながら持っていると、その数十m先に、
何十軒も店が出ている青空マーケットを発見したのだ。
しかもそこで店番している民族衣装を着たペー族の老人たちに声をかけても、
店の物を買ってけなんていわず、写真撮影に協力してくれたのだ。
「なんだよ、あのポシェットに払った10元は無駄だったのか」
そんなささやかな「失敗」もあったら、それもまあいい思い出の1つにはなっている。
・沙坪・写真