現役東大生社長・高橋飛翔インタビュー かさこワールド

現役東大生(法学部3年生、21歳)にして、会社を自ら設立。
社長を務め、事業を行う、高橋飛翔氏。
彼はなぜ、学生で事業をはじめたのか。
どんな想いを胸に、人生プランを描いているのか。
21歳の一人の若者の内面に迫った。(取材日:2007年10月17日)

●1:発端:なぜ彼を取材したのか
現役東大生にして会社の社長といえば、
以前かさこワールドで紹介した、
ホリエモンの元かばんもち、保手濱彰人氏をご存知かと思う。
東大で初となる起業サークルを立ち上げ。
実際に自分の会社を設立し、現役生ながら事業を行っている。

高橋飛翔氏と会ったのは保手濱氏の取材時。
高橋氏は同じ起業サークルTNKに所属し、
保手濱氏が設立したホットティー株式会社の取締役として、
名刺をいただいていた。

そして2007年1月、彼は自ら会社を立ち上げた。
起業サークルが単なる学生の「ビジネスごっこ」ではなく、
保手濱氏に続いて実際に起業する学生が現れたということだ。


私が彼に特に興味を持ったのは、
現役大学生にして起業したことだけではなかった。
彼のミクシィのプロフィールには、「政治家志望」と書かれていた。
「30代後半で政界に転向する予定」

ミクシィのプロフィールで政治家志望であることを堂々と宣言し、
かつ30代後半には、という時期まで書かれていたことに興味を持った。
私もミクシィのプロフィールで、政治家転身を書いているからだ。
現役大学生社長にして、政治家を志す21歳の若者が、
どんなことを考えているのだろうか。
そこで彼にインタビューすることにした。

●2:契機:大学合格後の「空虚」と起業サークルの出会い
高橋氏は、現代日本の受験戦争に勝ち抜いた一人である。
中学は私立名門進学校の海城中学校を受験。
友達に中学受験することを公言していたため、
負けず嫌いだった彼は、何としてでも合格せねばと猛勉強し、
見事に合格した。

海城高校にあがった彼は、バンド活動に熱中する一方、
この先の進路を考えた時、
漠然と「歴史に名を残せるような人物になりたい」と思ったという。
「普通のサラリーマンなり官僚になって働いて、
いずれ死んでいくだけの人生じゃつまらないなと」

卒業後の進路を考えた時、
自分にとって「マイルストーン」(道しるべ)となるような、
しっかりとした目的が欲しいと考えた彼は、東大受験をすることにした。
「ニュースなどからなんとなく政治に興味・関心があり、
もし将来、政治家になるんだったらやっぱり東大かなと思って」

東大受験したものの現役合格はならず。
一浪して東大と慶応大を受験。
「もし東大に落ちて、慶応だけ合格したら、
仮面浪人しようかと真剣に考えていた」が、
無事に東大合格を果たした。

しかし、東大合格という大きなマイルストーンをクリアした彼は、
大学1年生の頃、目的喪失状態でいた。

それは、どの大学生でも抱く想いだと思う。
中学、高校の6年間、
ただいい大学に合格するだけが人生のすべてで、
それだけを目的にした学生が、
大学合格という目的を果たした後、
何をしたらいいのかわからないという状態に、多くが陥る。
彼もそのどこにでもいる大学生の一人に過ぎなかった。

高校生の頃にバンドをやっていたので、
大学でも音楽サークルに入ってバンド活動をした。
父親がプロ級のゴルフの腕前だったこともあり、
ゴルフサークルにも入った。
しかし、そんなにおもしろくはない。
大学生活の4年間をかけて熱中できる対象とは思えなかった。
彼は大学で何をしようか、浮遊していた。

転機が訪れたのは、大学1年生の11月のこと。
大学教授の授業を生徒が採点する「逆評点」に、
起業サークルTNKの広告が載っていた。
彼は興味を覚え起業サークルに行ってみることにした。

そこで彼は驚いた。
起業サークルにいる人たちの気質が、
これまで出会った東大生の気質とは違ったからだ。

「多くの東大生はコンサバティブ(保守的)な人ばかりだった。
卒業後の進路は、約3割が官僚になり、約3割が弁護士になり、
そして残りの大半は一流上場企業へと就職していく。
ただもうそんな時代じゃないと思うんです。
アメリカでは優秀な大学生ほど起業し、
そうでない人が企業に就職したりする。
でも日本は未だに保守的で、優秀な人が官僚や大企業に行きたがる。

それに違和感を覚えていたのですが、
起業サークルにいる人たちは、
みんなチャレンジングな気持ちを持っていて、
そういう保守的な考えを持っていなかった。
東大生にもこういう人たちがいることにとても驚きました」

さらにもう1つ、彼が驚いたことがある。
大学在学中に起業する人がいたことだ。
「当時、起業サークルTNKの代表だった保手濱さんが、
12月に実際に会社を設立したのです。
卒業後に起業するという発想はあっても、
在学中に起業するという発想はアタマになかった」

両親が起業家で、父親は今もなお、会社の経営を行っているゆえ、
高橋氏にとって「起業する」ことは、
サラリーマン家庭の子どもと違い、実に身近なことだった。
しかし、学生からやってしまおうという発想は、
まったくなかったという。

彼はこの時、保手濱氏が代表を務めるホットティー株式会社の設立に加わり、
取締役として4ヵ月間、勤めていた。
そのことが、彼が後に、在学中に起業する契機となったのである。

大学2年生になった彼は、
保手濱氏から起業サークルTNKの代表を引き継いだ。
保手濱氏が立ち上げた起業サークルをさらに発展させるため、
組織整備に力を注いだ。
歴史の浅いサークルを、これからも永続できる組織になるよう、
後輩の育成に力を入れ、代表の任期を定めるなどした。
何事も彼一人だけで何でもやってしまうのではなく、
できるだけ分業体制にし、後輩を交えて組織で運営する体制を整えた。

「ただ起業サークルを4年間やる必要はないと思った。
1〜2年間、サークルでいろんなことを経験すれば十分。
だから代表の任期も1年と定めて、
自分は2年生の12月で後輩に譲ることにしたのです」

何をやったらいいかわからなかった大学1年生。
起業サークルの代表として力を入れた大学2年生。
そして彼は、大学3年生を前に、起業することにしたのだった。

●3:起業:設立5ヵ月で信金から融資4000万円

起業を思い立ったものの、何の事業をするかは決めていなかった。
「驚くべき革新的なビジネスプランが、
すぐに思いつくわけではないですし(笑)。
それで今、自分が持っているリソースを活用してできるビジネスをしようと、
現役東大生の家庭教師紹介事業をはじめることにしました」。

家族・友人・知人などから資本金300万円を集め、
2007年1月にヴォラーレ株式会社を設立。
当初は高橋氏ともう一人の現役東大生ではじめた。

彼自身が現役東大生ゆえ、家庭教師を探すのは苦ではない。
最大の課題は、家庭教師を必要とするお客さん集め。
チラシを配ったり、ホームページを立ち上げたりして集客。
「毎月キャッシュを生む重要な事業」に育っていった。

家庭教師紹介事業をベースに、会社を運営しながら、
新規事業は常に考えていた。
「ベンチャー企業ですから、既存の事業をしていくだけでなく、
常に新しいビジネスを考え、実現できるものは、ビジネスにしていくつもりです」

現役東大生のネットワークを活用した新事業として、
彼が考えたのがウェブ予備校だった。
「これからインターネットでは動画がアツクなると、
無料動画サービスGyaoを見て思ったのです。
そこで現役東大生を講師に動画で授業する、
ウェブ予備校ビジネスを考えたのです」

とはいえWEB予備校を立ち上げるには、それなりの費用がかかる。
彼はビジネスプランを持ち、銀行に向かった。
そして驚くべきことに、
設立まもない現役大学生社長の会社に、
4000万円の融資が行われることになった。
5月に融資が行われ、ウェブ予備校「楽☆スタ」の立ち上げへ。
それに伴い社員も5月に3人だったのが、10月現在で10名に。

しかも驚くべきことに、社員には現役東大生だけでなく、
社会人経験で高橋氏より年上の中途採用社員もいることだ。
「社員の割合は、学生と社会人の半々ぐらい。
学生だけだと試験などがあって、
フルにビジネスに携われない時期も出てきてしまうので、
社会人経験者の人材はぜひとも欲しい」

高橋氏はさらっと言っているが、これはすごいことだと思う。
大学生の起業サークルがサークルのノリでビジネスごっこをはじめ、
大学生だけで持ち出しでやるなら、
まあいってみればプロをめざしているけど、
音楽だけではくっていけず、
持ち出しでライブをやっている「素人バンド」と変わらない。

現役大学生社長の会社に、年上の社会人が社員となることは、
ある意味では「きちんとした会社」として認められたことではないかと思う。
実際に銀行から融資を受けているのもすごい。
実績がなく、色眼鏡で見られがちな状況の中、
融資を受けられるというのは、
ビジネスプランがしっかりしていたからに違いない。

ウェブ予備校「楽☆スタ」は7月にオープン。
さらに、某予備校から、講師の採用と研修を行う業務委託もはじまった。
現在、家庭教師紹介事業、WEB予備校事業、業務委託事業の3本柱で、
事業を展開している。
まだ設立1年未満の会社がである。

これからもどんどん新しい事業に取り組んでいくとのこと。
リスクも大きいが、それを見極め、リスクを最小限にし、
リターンを追求していく、ベンチャー企業の今後が楽しみだ。

●4:経営:フラットな組織作りとマスコミ対応
高橋氏は今、会社の近くで社員とルームシェアをして暮らしている。
「うちの会社は、会社の近くに住んでいると住宅手当が出るんです。
だから結構みんな会社の近くに引っ越してくる人も多いんですよ」

このあたりの社員へのモチベーションシステムがうまいなと思う。
仕事に注力してもらうよう、
近くに住めば住宅手当という発想はおもしろいなと。
その他、年に4回の昇給制度や月ごとに行う社員の誕生会など、
社員の力を引き出す制度に力を入れていることが興味深い。

起業サークルTNKの組織体制整備でも発揮されたが、
組織力を機能させるため、
「俺が俺が」ではなく、できるだけ組織をフラットにし、
部下にどんどん仕事を任せていくことに配慮している点だ。

事業立ち上げ時は社長自らが陣頭指揮を行うが、
ある程度たったら部下にその事業を任せてしまう。
実際、家庭教師紹介事業も、楽☆スタ事業も、
ともに事業を行う最高責任者は、すでに社長とは別の社員になっている。
「社員レベルをあげていかなければ企業は成長しない」

当たり前といえば当たり前。
でも21歳の大学生が会社を立ち上げ社長になったら、
ついつい自分が何でも口出しし、
何でも自分でやらなきゃ気がすまないという風になってもおかしくない。

別に21歳の学生社長でなくても、中小企業の社長の多くは、
いつまでたっても部下に仕事を任せようとせず、
自分でどの事業もやってしまう人が多いのではないか。

もちろん社長がすべてやってしまうことの良さはあるが、
そうなれば組織はある一定規模以上、大きくならないし、
部下や後継者は育たないし、
すべて社長が決めることから、誰もその決定に意義をいえず、
牛肉偽装のミートホープのように、社長独裁で、不祥事の温床ともなりかねない。

「社長はオールラウンダーとして、部下に仕事をまかせ、仕切っていく立場。
社長としてやるべきことは、
組織のカルチャーをつくり、みんなを同じベクトルに向けていくこと。
それをしないと組織は単なる寄せ集めになってしまいますから」

「リーダーシップをとることと仕事ができることは違う」。
会社を船にたとえ、自分は舵取りをする船長のようなものだという。
船長自らが船を漕いでいると、この先起きることへの予想や対応、
どこに行くかという針路の選択がままならなくなる。
だから高橋氏は、部下にどんどん仕事を任せ、
自分は会社の舵取りに専念する意識がある。
21歳でまだ設立1年も満たない社長として、
そういう意識があるというだけでもすごいことだと私は思う。

マスコミ取材対応にしてもそう。
各事業の取材ならその事業の責任者に取材を任せ、社長は表に出ない。
21歳の学生社長なら、マスコミ取材が来たら、
「俺が出たい」「俺が目立ちたい」と思うのが常だろう。
しかし高橋氏はそういうことに対して、非常に用心深く注意しているようだ。

「社長が芸能人みたいに扱われるのはなんか違うと思うし。
社長ばかり出ていると他の社員のモチベーションにも影響するし。
マスコミの力は大きいだけに、うまく付き合っていきたい。
必要以上に社長がメディアに露出したりして、
そこで大言吐いても、会社にとっていいことはないですから」

2〜3年前、ホリエモンの登場を筆頭に、
若手ベンチャー社長が芸能人のように扱われることが多かった。
ただそのために「出る杭は打たれる」がごとき、
ホリエモンが叩かれたりすることも多かったし、
メディアに露出しているわりに業績が伴っていないと批判されることもあった。
現にライブドア株の異常な人気ぶりは、会社の業績そのものの評価というより、
ホリエモンのメディア露出で株価がつり上がったものともいえる。

その後、ライブドア強制捜査に伴うライブドアショックで、
新興株式市場の大暴落が起き、
メディアは最近、若手ベンチャー社長を取り上げなくなった。
そういう流れを冷静に高橋氏は見てきたからこそ、
気をつけねばと思っているのだろう。

●5:政治:教育を国家のインフラ事業に
そして最後に、私が最も興味を持った、高橋氏の政治家プラン。
彼は政治家になって特に力を入れたいのは、教育と外交の2つだという。

「日本の今の教育には矛盾点があると思います。
ゆとり教育が大事といいながら、厳然として厳しい受験戦争があり、
個性が大事といいながら、学力による平準化が行われている。

国際社会の中で日本が置かれている状況を考えると、
もっと危機感を持つ必要があるのではないか。
日本が置かれている状況理解や、教育レベルをあげていくことで、
国際社会の中で生き残れる日本人像を、つくっていく必要があると思います。

教育って、赤字でもやらなければならないことがある。
たとえば図書館が夜遅くまでやっていて、
いつでも無料で勉強できる環境づくりは民間の論理ではできない。
教育は国のインフラ事業として、教育の質を高めていくことについては、
税金を使い、赤字でもしっかりやっていくべきだと思います」

教育ビジネスに携わっているからこそ、
民業としての教育において、やれることとやれないことを、
高橋氏は感じ取っているのではないか。

だからこそ政治家になり、国の事業として教育に力を入れてきたい。
それが国民の教育水準をあげ、
国際社会の中で生きていく力を育てることで、
外交面で失策を繰り返し、海外の圧力に屈しやすい日本を、
いい意味で復権したいと思っているのだろう。

まだ起業して1年もたっていない。
まだたったの21歳。
高橋氏の想いがどこまで実現するかは未知数だし、
年齢や経験とともに、その想いも変わっていくかもしれない。

しかしモラトリアムを楽しむ大学生が多い中、
就職バブルでどっかの大企業に就職できればいいやと思っている、
他の学生に比べて、彼が一歩も二歩も抜きん出ていることには間違いない。

もちろん人によって、自発的に何か行動を起こすこと、
人生を主体的・能動的に生きていくことに気づく年齢は違う。
彼の生き方や想いが万人にとって正しいわけでもないだろう。

ただこのような21歳の若者が今の日本にいて、
自分の人生、自分のできることを考えながら、
将来の日本を変えていきたいという強い想いは、
私の心にふれるものがあった。

今後の活躍を期待したい。
そして彼が政界転向する頃、ちょうど私も政界転向している頃だろう。
その時までにお互いに様々な経験を積み、転向時に理念があえば、
ぜひとも手を携えて、政治を行い、日本を変えていきたいなと思った。

●取材を終えて、
「何か宣伝しておきたいこと、ありますか?」と質問すると、
「とにかく人材が欲しい!随時人材募集中ですので、
ぜひ興味のある方は連絡ください」とのことだった。
もし会社に興味のある方は下記、採用ページをご覧ください。
http://www.volare.jp/recruiting/index.html

●関連リンク
ヴォラーレ株式会社

ミクシィ 高橋飛翔さん

高橋飛翔ブログ VOLARE,INC.で飛翔せよ!

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